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M3 Education 模試制作チーム

「国試の本質」を追求して40年。
医学生の“試金石”となる業界最大規模の模試制作の裏側

インタビュイー: 医科事業本部医科模試グループ

「すべての医療従事者に“最高の学習体験”を提供する」と理念を掲げるエムスリーエデュケーション。医師を目指す医学生の「試金石」となる模擬試験はどのように作成されているか。医科模試グループの3人に話を聞いた。

ほぼすべての医師国家試験受験生が利用、40年以上の歴史のある模試を作る面白さと難しさ

当社は40年以上、医師国家試験対策用の模試を作っています。ほぼすべての受験生が受ける模試と言われています。

編集部は、他の媒体で編集やライターを経験していたメンバーや医師免許を持つメンバーなど、多様なバックボーンを持った人で構成されています。

模試制作の流れとして、まずは編集部で年間に制作する模試ごとのテーマ(編集方針)を定め、それに合う問題を模試1つにつき400問設定します。その後、各診療科の医師の先生(約120名)にご協力いただきながら校正・校閲を進めていきます。

医療に関する教材であり、内容に誤りがあってはいけないため、何か言葉を1つ変えるにしても、専門の医師の先生に確認をとっており、制作には多くの時間が必要です。1つの模試に対して全部で5回程度は校閲を行い、間違いがないように丹念に仕上げていきます。

模試1つあたりの制作期間は、約4〜6か月程度。年間6本制作するので、3〜4本は制作タイミングが重なることになり、常に同時進行が求められます。

模試制作において最も重要なのは「医師国家試験(国試)に準拠すること」です。これが編集業務のスタートであり、私たちが迷ったときに立ち返る原点にもなります。先ほど、1つの模試につき400の問題を作ると言いましたが、採択の基準で最も重要なのは「自分が国試出題委員だったらこの問題を出すか」という点です。

例えば、新聞やテレビ、雑誌であれば、1つのテーマがあったら、そのテーマに沿って編集部員や記者がその道の専門家に取材して、その方の意見を掲載します。

そこには1つの絶対的な正解があるわけではなく、複数の見解が併記されていくわけです。
同様に医療の現場でも、治療方針などについて医師によって見解が異なる可能性があります。しかし、模試制作においては「国試」が一番の基準となります。「国試だったらどういう問題を出すか」を私たちが研究し、それに沿って問題も解答も作っていくのです。

模試は「正答が一意に定まるように作る必要がある」という特殊性を有します。そのため、実際に校閲作業時は様々な意見が飛び交い、どのようにまとめたらいいのかわからず苦労することもたくさんあります。しかし、質の高い模試を作り上げるためには絶対に避けては通れない工程です。

だからこそ「チームでより良いものを追求していく」ことを楽しめる人にとっては、ものすごくやりがいのある仕事です。1つのことをこれでもかと追求し、極めていくようなことが好きな人には向いている仕事だとも思います。

「的中」と「医学生の生の声を聞けること」こそ、模試制作の醍醐味

自分たちが作った問題と類似の問題が国試で出題されることを「的中」と呼ぶのですが、的中が出ると「私たちの作った模試を受けてくれた学生さんがうまく得点できたんだろうな」と、その瞬間に思わず心の中でガッツポーズを決めることもあります。

模試制作の仕事は、国試を受ける医学生の役に立てるかどうかが問われます。だからこそ「的中」は模試制作における最も重要な成果と考えています。

作成した問題を先生たちが「良い問題」と評価してくださることがあります。「良い問題」とは、その問題を解くプロセスが綿密に計算されて作成された問題で、かつ、正答率が低すぎず高すぎもしないものを指します。

国試は「どういう医師であるべきか」という視点が問題に反映されているので、単なる知識だけでなく、答えに辿り着くまでの思考のプロセスも同時に問われます。そういった思考プロセスが国試で問われるからこそ、臨床の現場で必要とされる思考力に繋がっていく。
もちろん、こういった思考プロセスを問う問題を作り込むのは、一段と難易度が上がります。だからこそ、模試でもこのような「良い問題」を作れたときには、非常に達成感があります。

また、模試受験後の学生さんの声も励みになります。模試後にアンケートをとるのですが、そこに良いことが書かれていると、自分たちの仕事が医学生のためになっていることを実感できますね。

最近では、X(旧Twitter)の声も気にしています。アンケートでは好意的な意見の方々が書いてくれる傾向がありますが、Xには生の声が溢れています。そこに好意的な意見を見つけると、とても嬉しい気持ちになりますね。ときに厳しいご意見を頂くこともあるのですが、それはそれとして次の模試制作に活かしていこうと真摯に受け止めています。

「国試の本質」に近づくために、求められるのは探究心と優れた調整力

限られた時間の中で複数の先生方の意見をまとめる必要があるので、ときには意見が割れてしまい、頭を抱えてしまうこともあります。ただ、そこで踏みとどまって、粘り強く聞き取りを重ねたり、自ら資料を調べたりして、「国試だったらどれが正解なのだろう」と深く考える作業を繰り返していると、自身にとっても「探究力」や「粘り強さ」が身についてきます。

また、ご協力いただいている医師が約120名と、多くの人が関わっているからこそ、「進行管理」は非常に重要です。毎週、編集部内でスケジュールの打ち合わせがあるのですが、そこで、先々の制作予定を見ながら、1日単位で業務の割り振りを行います。エクセルシートを少しずつ改良しながら、ときに新しいやり方を導入しながらと、日々改善を繰り返しています。

基本的な働き方はリモートと出社が半々で、毎日昼に1回、全員顔出しでミーティングを行っています。このときに個々人の業務や進行状態を確認し、相互でサポートする体制を取りながら、編集部全体として遅れがないように制作を進めていきます。

今後も質の高い模試を作ることで国試受験生をサポートしていくことが、模試制作グループの目標です。受験生からのアンケートの満足度を高めるとともに、作問の的中率を上げることにも注力していきます。また、数値的な面だけではなく、模試を受けた学生さんが「これは勉強になるな!」と心から思えるような模試を作っていけたらと思っています。

(プロフィール)
Oさん 
新卒でCRO企業(医療機器開発受託機関)に入社。海外文献の翻訳や、厚労省の報告書の作成業務を経験。その後、循環器内科医向けのサイトでライターとして活躍。編集経験や医療分野に携わることができるという理由からエムスリーエデュケーションに入社。医師国家試験模試制作のグループマネージャーを務める。

Kさん
医師として働いていたが、学生時代から興味のあった“教育”に携わりたいと一念発起して転職を決意。医療福祉業界の教育サービスを提供しているエムスリーエデュケーションに入社して、模試制作グループのメンバーとして活躍している。

Sさん
前職で中・高校生向けの教材の編集業務を担当。編集者としてさらなる高みを目指すために転職を決意。新しい分野にチャレンジすると決めて、医学教育に特化しているエムスリーエデュケーションに入社。現在は、模試制作グループで、制作工程管理を行っている。

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