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Projects 02:
M3 Education 模試制作チーム
「すべての医療従事者に“最高の学習体験”を提供する」と理念を掲げるエムスリーエデュケーション。医師を目指す医学生の「試金石」となる模擬試験はどのように作成されているか。医科模試グループの3人に話を聞いた。
当社は40年以上、医師国家試験対策用の模試を作っています。ほぼすべての受験生が受ける模試と言われています。
編集部は、他の媒体で編集やライターを経験していたメンバーや医師免許を持つメンバーなど、多様なバックボーンを持った人で構成されています。
模試制作の流れとして、まずは編集部で年間に制作する模試ごとのテーマ(編集方針)を定め、それに合う問題を模試1つにつき400問設定します。その後、各診療科の医師の先生(約120名)にご協力いただきながら校正・校閲を進めていきます。
医療に関する教材であり、内容に誤りがあってはいけないため、何か言葉を1つ変えるにしても、専門の医師の先生に確認をとっており、制作には多くの時間が必要です。1つの模試に対して全部で5回程度は校閲を行い、間違いがないように丹念に仕上げていきます。
模試1つあたりの制作期間は、約4〜6か月程度。年間6本制作するので、3〜4本は制作タイミングが重なることになり、常に同時進行が求められます。
模試制作において最も重要なのは「医師国家試験(国試)に準拠すること」です。これが編集業務のスタートであり、私たちが迷ったときに立ち返る原点にもなります。先ほど、1つの模試につき400の問題を作ると言いましたが、採択の基準で最も重要なのは「自分が国試出題委員だったらこの問題を出すか」という点です。
例えば、新聞やテレビ、雑誌であれば、1つのテーマがあったら、そのテーマに沿って編集部員や記者がその道の専門家に取材して、その方の意見を掲載します。
そこには1つの絶対的な正解があるわけではなく、複数の見解が併記されていくわけです。
同様に医療の現場でも、治療方針などについて医師によって見解が異なる可能性があります。しかし、模試制作においては「国試」が一番の基準となります。「国試だったらどういう問題を出すか」を私たちが研究し、それに沿って問題も解答も作っていくのです。
模試は「正答が一意に定まるように作る必要がある」という特殊性を有します。そのため、実際に校閲作業時は様々な意見が飛び交い、どのようにまとめたらいいのかわからず苦労することもたくさんあります。しかし、質の高い模試を作り上げるためには絶対に避けては通れない工程です。
だからこそ「チームでより良いものを追求していく」ことを楽しめる人にとっては、ものすごくやりがいのある仕事です。1つのことをこれでもかと追求し、極めていくようなことが好きな人には向いている仕事だとも思います。
自分たちが作った問題と類似の問題が国試で出題されることを「的中」と呼ぶのですが、的中が出ると「私たちの作った模試を受けてくれた学生さんがうまく得点できたんだろうな」と、その瞬間に思わず心の中でガッツポーズを決めることもあります。
模試制作の仕事は、国試を受ける医学生の役に立てるかどうかが問われます。だからこそ「的中」は模試制作における最も重要な成果と考えています。
作成した問題を先生たちが「良い問題」と評価してくださることがあります。「良い問題」とは、その問題を解くプロセスが綿密に計算されて作成された問題で、かつ、正答率が低すぎず高すぎもしないものを指します。
国試は「どういう医師であるべきか」という視点が問題に反映されているので、単なる知識だけでなく、答えに辿り着くまでの思考のプロセスも同時に問われます。そういった思考プロセスが国試で問われるからこそ、臨床の現場で必要とされる思考力に繋がっていく。
もちろん、こういった思考プロセスを問う問題を作り込むのは、一段と難易度が上がります。だからこそ、模試でもこのような「良い問題」を作れたときには、非常に達成感があります。
また、模試受験後の学生さんの声も励みになります。模試後にアンケートをとるのですが、そこに良いことが書かれていると、自分たちの仕事が医学生のためになっていることを実感できますね。
最近では、X(旧Twitter)の声も気にしています。アンケートでは好意的な意見の方々が書いてくれる傾向がありますが、Xには生の声が溢れています。そこに好意的な意見を見つけると、とても嬉しい気持ちになりますね。ときに厳しいご意見を頂くこともあるのですが、それはそれとして次の模試制作に活かしていこうと真摯に受け止めています。
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