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数学・統計
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数理統計ハンドブック

数理統計の幅広い分野にわたり「応用できる」水準で詳しく解説した,統計を使うための必携書。「これさえあれば」の一冊

数理統計ハンドブック

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   紙書籍 
蓑谷千凰彦(慶應義塾大学名誉教授,日本大学教授)
[みみずく舎:発行]
A5判,1042頁,1色刷
2009/12/10発行
¥22,000(本体¥20,000+税¥2,000)
ISBN 978-4-87211-982-4
データを読み,統計を現実に応用するために。
「初等」統計学とワンランク上のレベルを繋ぐ。
豊富な具体例・トピックスとていねいな説明。
不等式・確率分布・仮説検定等を詳細に解説。
最新の話題まで網羅した「読める」「引ける」本。

まえがき
 統計学の入門書は数多くある.しかし,医学,工学,化学,心理学,経済学,ファイナンス,社会学等々に応用される統計学は,初等統計学の水準よりもかなり高い水準と,より高度な内容が要求される.
 ところが中級以上の統計学のテキストは急にレベルが高くなり,理解できない,という声をよく聞く.統計学におけるこのような初級と中級の間の大きな間隙は,丁寧な説明と具体例を挙げて詳説することによって埋めることができるのではないかと考えたのが本書執筆の動機である.
 本書の内容を大きく分ければ,観測データの記述(1章),確率,確率変数およびモーメント(2〜5章),確率分布と標本分布(6〜10章),収束,大数の法則,中心極限定理(11章),パラメータ推定(12〜13章),仮説検定(14〜16章),回帰分析(17〜19章),そして最後に,パラメータ推定と関連している推定関数(20章)から成る.各章の「はじめに」で,その章では何をあつかっているかを要約しているので,ここでは本書の特徴を以下列挙しておこう.
 (1)すべての章にわたって,初等的な微分・積分と基礎的な行列の予備知識のみで十分理解できるよう,可能な限り具体例も入れ,丁寧な説明を心掛けた.
 (2)確率の公理,定理,基本法則のみが展開されていると退屈になるので,確率論における有名な問題,誕生日の問題,一致の問題(邂逅の問題),賭博者の破産問題,占有(場所占め)の問題,ポリアのつぼを紹介している.楽しんで頂きたい(2章).
 (3)統計学における重要な不等式,ジェンセンの不等式から導かれる情報不等式,カルバック・ライブラー情報量,リヤプノフの不等式,マルコフの不等式,チェビシェフの不等式,この不等式を改善したベルンシュタインの不等式,ヘルダーの不等式とこの不等式から得られるコーシー・シュワルツの不等式,これらほとんどすべての不等式について,証明も省略せず説明している(5章).
 (4)重要な確率分布はほとんどとりあげ,積率母関数(mgf)を導出し(コーシー分布は特性関数),このmgfにもとづいて期待値,分散,歪度,尖度を求めている.とくに,応用範囲が広いにもかかわらず,統計学で依然として重要視されていない(テキストによってはまったくふれられてさえいない)逆ガウス分布について類書よりもくわしく説明し,推定,検定においても逆ガウス分布をあつかっている(7章,12〜14章).
 (5)正規分布より両すその厚い分布として取り上げられることの多い多変量t分布についてもくわしく述べている(9章).
 (6)区間推定では2項分布のp,ポアッソン分布のλ,指数分布のβ,正規分布のσ2に関する複数の信頼区間設定法を,モンテ・カルロ実験によってどの方法が良いかを比較,検討している(13章).
 (7)仮説検定はネイマン・ピアソンの補題にもとづき,尤度比検定から棄却域を求めている.また,代表的ないくつかの仮説検定において検定力を計算し,検定力曲線を図表化している(14章).
 (8)回帰モデルで仮定した誤差項の確率分布が真の確率分布と異なっているとき,仮定した分布のもとで得られる最尤推定量は擬似最尤推定量(QMLE)である.このQMLEが,しかし,一致性をもつ場合がある.どのような確率分布のもとでQMLEは一致性をもつかを説明した(17章).
 (9)回帰モデルの誤差項は正規分布に従うという仮定のもとで導出される回帰係数=0のt検定は,非正規分布のもとでも,第I種の過誤の名目サイズからの歪みは小さい.さらに,非正規分布のもとでも,t値が5〜6ぐらいあれば検定力も高く,t検定の非正規分布のもとでの頑健性という意外な結果がモンテ・カルロ実験から得られている(18章).
 (10)最後に,推定関数の理論は読者になじみが薄いと思われるので,20章に示されている主要な点を挙げておこう.
 最小2乗法(LS)の正規方程式,最尤法(ML)のスコア関数,一般化モーメント法(GMM)のモーメント条件,これらはすべて観測値とパラメータの関数であり,この関数からパラメータ推定量が得られる.この関数が推定関数(EF)である.
(i)Wedderburnは擬似尤度関数(QL)を指数型分布族から導いたが,EFからの接近はQLの導出に指数型分布族を仮定する必要はない(20.4,20.12節).
(ii)推定量の特性という視点から最尤推定量(MLE)は漸近的特性が良い(BAN推定量)と評価されているが,EFからの接近は,スコア関数はいかなる標本の大きさのもとでも,一意的に最適のEFを与える.すなわちMLは有限標本においても最適である(20.6,20.7節).
(iii)最適EFを与える式から,正規分布(μ,σ2)の不偏推定量(X,S2)が得られる(20.8節).
(iv)MLのスコア関数とEFの擬似スコア関数は類似の概念である(20.13,20.14節).
(v)ガウス・マルコフの定理が成立しないLS,あるいはスコア関数の期待値が0にならないMLの場合にも,EFは少なくとも一致性をもつ推定量を与える(20.14節).
(vi)擬似スコア関数は最適のEFを与える(20.15節).
(vii)回帰モデルにおいて,E(y|X)=,var(y|X)=Vの定式化が正しく,かつVβと独立のとき,確率分布の仮定なしで得られるβの最適EFは,誤差項に正規分布を仮定したときの必要条件に等しい.いいかえれば,正規分布の仮定が正しくなかったとしても,正規分布の仮定のもとで得られる擬似最尤推定量(QMLE)はBANではないがCANである(20.15節).
(viii)漸近的有効推定量を与えるGMMの必要条件と最適EFは同じである(20.18節).
(ix)不偏EFを観測データの情報にもとづいてウエイトづけするのが経験的尤度の方法である(20.19節).
 EFからのパラメータ推定への接近は,確率分布を仮定しないで,期待値ベクトルと共分散行列のみを特定化するセミ・パラメトリックな方法である.推定量(赤ちゃん)は推定関数(乳母車)のなかで眠っている.推定量ではなく推定関数を重視するのは「赤ちゃんより乳母車を重視するようなものだ」(Crowder)という批判もあるが,新たな観点から推定法を見直すことになった推定関数の理論と応用は,今後の一層の展開が楽しみな分野である.
 最後になりましたが,予定より多くなり過ぎた原稿,また,たびたびの原稿の変更・追加にも快く応じてくださり,膨大なゲラを念入りにチェックしてくださったみみずく舎編集部に感謝致します.

2009年11月
蓑谷千凰彦

目次

1 観測データの記述
1.1 はじめに
1.2 中心の尺度
1.3 散らばりの尺度
1.4 四分位数
1.5 外れ値の検出
1.6 外れ値への対処
1.7 多数のデータの特性の記述
1.8 カーネル関数
1.9 度数分布表からの計算
1.10 箱型図

2 確率
2.1 はじめに
2.2 確率概念
2.3 古典的定義――数学的確率,先験的確率――
2.4 相対頻度概念――統計的確率――
2.5 確信の度合としての確率――主観確率――
2.6 公理的接近法
2.7 基本的確率法則
2.8 計算規則
2.9 確率の定理
2.10 事象の無限系列
2.11 条件つき確率
2.12 乗法定理
2.13 独立性の定義の一般化
2.14 分割および全確率の公式
2.15 ベイズの定理

3 確率変数と確率分布
3.1 はじめに
3.2 確率変数
3.3 離散確率変数と連続確率変数
3.4 確率変数の関数の分布
3.5 逆分布関数
3.6 生存関数
3.7 逆生存関数
3.8 危険度関数

4 2変量確率変数
4.1 はじめに
4.2 同時確率分布,周辺分布,分布関数
4.3 条件つき分布および独立
4.4 2変量確率変数の関数の分布
4.5 n変量確率変数

5 期待値,分散,母関数
5.1 はじめに
5.2 期待値
5.3 期待値の性質
5.4 分散
5.5 他の中心および散らばりの尺度
5.6 k次モーメント
5.7 確率母関数と階乗積率母関数
5.8 積率母関数
5.9 特性関数
5.10 キュミュラント母関数
5.11 母関数間の関係
5.12 2変量確率変数の関数の期待値
5.13 2変量確率変数の共分散と相関
5.14 関数の独立
5.15 条件つき期待値
5.16 母関数
5.17 モーメント問題

6 離散確率変数の確率分布
6.1 はじめに
6.2 一様分布
6.3 ベルヌーイ分布
6.4 2項分布
6.5 ポアッソン分布
6.6 幾何分布
6.7 負の2項分布
6.8 超幾何分布

7 連続確率変数の確率分布
7.1 はじめに
7.2 一様分布
7.3 指数分布
7.4 ガンマ分布
7.5 ベータ分布
7.6 正規分布
7.7 対数正規分布
7.8 逆ガウス分布
7.9 コーシー分布
7.10 ラプラス分布
7.11 ワイブル分布
7.12 パレート分布
7.13 ロジスティック分布
7.14 極値分布
7.15 指数型分布族

8 カイ2乗分布,t分布,F分布
8.1 はじめに
8.2 カイ2乗分布
8.3 t分布
8.4 F分布

9 多変量確率変数
9.1 はじめに
9.2 期待値ベクトル,分散・共分散行列
9.3 確率ベクトルの線形関数の2次形式
9.4 同時確率母関数と積率母関数
9.5 多項分布
9.6 多変量正規分布
9.7 正規確率変数の2次形式の分布
9.8 正規確率変数の関数の独立
9.9 n変量正規分布における周辺分布と条件つき分布
9.10 多変量t分布

10 確率分布の混合
10.1 はじめに
10.2 確率分布の混合
10.3 確率密度関数をウエイトとする混合

11 収束,大数の法則,中心極限定理
11.1 はじめに
11.2 分布関数の分布収束
11.3 確率密度関数の収束
11.4 確率収束
11.5 概収束
11.6 平均平方収束
11.7 r次平均収束
11.8 大数の弱法則
11.9 大数の強法則
11.10 中心極限定理
11.11 多変量の中心極限定理

12 パラメータ推定
12.1 はじめに
12.2 偏りと平均平方誤差
12.3 推定量がもつべき特性――小標本特性――
12.4 不偏性
12.5 最小平均平方誤差
12.6 有効推定量
12.7 クラメール・ラオの不等式
12.8 クラメール・ラオの不等式の一般化
12.9 最良線形不偏推定量
12.10 推定量の大標本特性
12.11 パラメータ推定法――最小2乗法――
12.12 パラメータ推定法――最尤法――
12.13 最尤推定量の漸近的分布
12.14 最尤推定量の特性
12.15 パラメータ推定法――モーメント法――
12.16 モーメント推定量の特性
12.17 十分統計量
12.18 指数型分布族と完備性

13 区間推定
13.1 はじめに
13.2 信頼区間と枢軸量
13.3 正規分布のμ
13.4 2項分布のp
13.5 ポアッソン分布のλ
13.6 指数分布のβ
13.7 逆ガウス分布のμ
13.8 正規分布のσ2
13.9 逆ガウス分布のλ

14 仮説検定
14.1 はじめに
14.2 仮説検定の5段階
14.3 仮説の設定
14.4 検定統計量とその分布の決定
14.5 有意水準と棄却域の決定
14.6 検定方式と2種類の過誤
14.7 検定の実施と結論
14.8 ネイマン・ピアソンの補題
14.9 尤度比検定
14.10 尤度比統計量の漸近的分布
14.11 2項分布のpに関する仮説検定
14.12 正規分布のσ2に関する仮説検定
14.13 母平均の差の比較
14.14 正規母集団の分散比の検定
14.15 対比較による平均の差の検定
14.16 相関係数の検定
14.17 2項分布の割合の差の検定

15 適合度検定および分割表
15.1 はじめに
15.2 適合度検定
15.3 独立性の検定――分割表――
15.4 フィッシャーの厳密検定

16 独立性および正規性の検定
16.1 はじめに
16.2 独立性の検定――連検定――
16.3 独立性の検定――平均平方逐次階差テスト――
16.4 正規性の検定――正規確率プロット――
16.5 シャピロ・ウィルク検定
16.6 ダゴスティーノのD
16.7 範囲テスト
16.8 ギアリー検定
16.9 検定力の比較

17 回帰分析
17.1 はじめに
17.2 回帰モデル
17.3 定式化
17.4 重回帰モデル
17.5 未知パラメータの推定――最小2乗法――
17.6 最小2乗残差の性質
17.7 σ2の推定
17.8 偏回帰係数推定量の意味
17.9 フリッシュ・ウォフ・ラベルの定理
17.10 偏回帰作用点プロット
17.11 βの特性
17.12 s2の特性
17.13 回帰モデルの最尤推定量とその特性
17.14 非正規分布の最尤推定量
17.15 擬似最尤推定量
17.16 説明変数が確率変数のとき
17.17 モデルの説明力

18 回帰モデルにおける仮説検定
18.1 はじめに
18.2 βj=0の検定
18.3 t 検定の検定力
18.4 βに関する線形制約の検定
18.5 パラメータ推定量の非線形関数の検定――デルタ法――
18.6 誤差項の正規性検定
18.7 非正規分布のもとでのt検定

19 回帰診断
19.1 はじめに
19.2 通常の最小2乗法のまとめ
19.3 ハット行列
19.4 (内的)スチューデント化残差
19.5 番目の観測値を削除したときのパラメータ推定値の変化
19.6 (外的)スチューデント化残差
19.7 被説明変数の推定値への影響
19.8 クックのD
19.9 L-Rプロット

20 推定関数の理論と応用
20.1 はじめに
20.2 推定関数
20.3 最良不偏推定関数
20.4 擬似尤度関数
20.5 推定関数の理論
20.6 パラメータベクトルへの一般化
20.7 推定関数からのパラメータ推定量の特性
20.8 局外パラメータがあるときの推定関数
20.9 条件つきスコア関数
20.10 基本推定関数の最適結合
20.11 同時最適推定関数
20.12 擬似尤度関数
20.13 擬似尤度関数によるパラメータ推定
20.14 拡大擬似尤度関数
20.15 擬似スコア関数の最適性
20.16 拡大擬似スコア関数
20.17 φが未知パラメータの関数の場合の拡大擬似スコア関数
20.18 推定関数と一般化モーメント法
20.19 推定関数と経験的尤度
20.20 推定関数接近法からの特徴と批判

参考文献

付表
 付表1 標準正規分布
 付表2 t分布
 付表3 カイ2乗分布
 付表4-1 F分布(1)上側5%点
 付表4-2 F分布(2)上側1%点

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