第101回薬剤師国家試験は,平成28年2月27日および28日に実施された。受験者数は14,949名,合格者は11,488名,合格率は76.85%であった。前回(第100回)より合格者数は2,400名以上増えている。
前回,前々回の国試と比較し,今回の国試は全般的に難易度が下がったかもしれない。ただ,前回に引き続き,あるいはそれ以上に構造式,グラフや図表を扱った問題が多く出題され,さらに実験や測定等の問題も増え,問題文やデータから必要な情報を正確に読み取り,分析する能力が問われる傾向にある。新医薬品の出題数は例年より少なかったが,進歩の著しい抗体医薬品やがん治療,免疫,代謝関連からの出題は多い。分子生物学の細部を問う問題も目立ってきた。また,社会的に話題となった感染症(MERS,エボラ出血熱)や肺炎球菌ワクチンも出題され,日頃より薬事関連の情報には幅広く注目しておく必要が問われている。在宅医療における薬剤師業務など,より実践的な問題も押さえておく必要がある。このように,国試では毎回,薬剤師を取り巻く環境の進展から新しい事項が取り上げられ,薬学生に薬剤師への厳しい関門を突き付けているといってよい。
ただ,国試攻略の第一は,「傾向分析と対策」執筆の各先生が述べられているように,国試攻略の第一は「過去問」を完全に攻略しておくことにある。「暗記」ではなく,「理解」することが求められ,それにより応用力が身に付く。有効に活用してほしい。加えて,授業や実習で6年間学んだことを総復習することも必要であろう。実務実習で学ぶ中には新しい医療・薬学情報も含まれており,それが国試に直接繋がることも知っておくべきである。
数ある国試解説書のなかで,本書ほど丁寧に解説したものはないであろう。単なる解説ではなく,問題の周辺知識も得られるように詳しく説明されているが,それは学生のためにより解りやすく伝えようと心がけておられる熱血・辣腕執筆陣の賜物である。ぜひ多くの学生たちに本書を活用してもらいたい。そして多くの意見・感想を寄せてもらいたい。そのことで「わかる本」がより発展していけるであろうし,それは後々,諸氏の後輩のためにも役立っていくであろう。
本書および『国試がわかる本』で10年分以上の過去問を踏破し,自信をもって国試に臨み,合格を勝ち得ることを心から願ってやまない。
「第101回薬剤師国家試験問題解説書」編集委員会