泌尿器科学の取り扱う領域は腎・尿路系と男性生殖器系および副腎を含む後腹膜の疾患です。腎・尿路系や副腎は生体の恒常性(常に血液などの体液の組成を一定に保つ働き)を維持する重要な働きがあり,これらの臓器の機能がなくなると生体(個体)は維持することができなくなります。一方,男性生殖器は主に精子を産生し,次世代に個体の遺伝子を残すという人類にとってはさらに重要な役割があります。これらの臓器に発生する疾患を扱うのが泌尿器科ですが,泌尿器科は主に外科的な治療を担当しています。
ヒトに発生する病気にはいくつかのカテゴリーがあります。すなわち,腫瘍,炎症,機能障害,代謝異常,外傷,先天異常などですが,これらの病気(病態)は例外はあるもののどの臓器にも発生しうるものであり,病気をカテゴリーで理解するとその病態が非常にわかりやすくなります。
泌尿器科で扱う疾患も同様であり,泌尿器科腫瘍(腎癌,膀胱癌,前立腺癌,精巣癌など),泌尿器科炎症,機能障害(排尿障害,腎不全,男性不妊症,勃起不全など),代謝異常(尿路結石など),泌尿器科外傷,泌尿器科先天異常(小児泌尿器科領域など)で,もちろん,個体の病状は実際の臨床の現場ではこれらの病態が相互に関与することもありますが,泌尿器科領域でもこのような病態単位で考えると診断,治療も含めた疾患全体を捉えることが容易になってきます。
今回,改訂したChart泌尿器科は従来と同様にこの病態単位を意識して構成しています。また実際の臨床の現場でのプライマリケアを充実させることや写真を増やすことで,国家試験を目指す医学生の皆さんになるべくわかりやすい構成にしたつもりです。
平成16年3月
野口純男