第105回医師国家試験が2月12日・13日・14日に実施され,8,611人が受験した。これから受験することになる医学生にとって大変関心があるのは当然であるが,大学において指導にあたっている我々教官にとっても,医学教育の一つの指針ともいうべき意義を投げかけられる思いがするのである。
医師国家試験の知識で患者さんを診よ,というのではない。医師国家試験に合格した者は,これから指導医のもとで医師として研修してよいということである。合格してから本格的な「医師としての人格の涵養とプライマリ・ケアの基本的な診療能力の修得」がスタートするのであり,また「診療に従事しようとする医師は,2年以上,医学を履修する課程を置く大学に附属する病院又は厚生労働大臣の指定する病院において,臨床研修を受けなければならない」とする臨床研修制度も,このことと軌を一にしていることはいうまでもない。
本書の編集にあたっては,ガイドラインを睨みながらも国家試験の理念からいささかも逸脱することなく,オーソドックスな勉強の指針を明確に示すべく解説して頂けるよう,各執筆者にお願いした。解説にあたられた先生方は日夜それぞれの分野で,診療・研究はもとより学生教育に熱心で,それぞれのお立場で学生間に評価された教育方法をもっておられる方々である。また,今回も国試問題とともに厚生労働省の正答が公開され,本書では国試受験者の正答率データなどをフィードバックしている。
本書は医師国家試験のための勉強の資料というばかりではなく,広く,医学教育の参考書としての意義をもつものであり,学生諸君が役立たせるとともに,指導にあたる教官の方々にも利用して頂き,ご批判,ご叱責を賜れば幸いである。
2011年4月 編者ら