社会福祉士は,社会福祉の専門的知識および技術を用いて福祉に関する相談・助言・関係者との連絡調整を行うことを業務とする専門職であり,「社会福祉士及び介護福祉士法」を根拠とする国家資格です。1987(昭和62)年に法律が整備され,1989(平成元)年より国家試験が開始されて以来,2024(令和6)年には第36回目の試験を迎えました。
創設当初の社会福祉士は,核家族化の進行・家庭内扶養の低下を背景に主に障害者や急速に増加している高齢者の相談援助を担う者として,その活躍が期待されていました。それから30年以上が経過し,高齢者や障害者などの地域生活に関する問題,貧困に関する問題,子ども・子育てに関する問題,家庭内や施設内での虐待,また司法分野との連携による社会福祉的な援助といった社会福祉士が介入すべき分野は質・量ともに高まっています。さらには,生活課題を複合的に抱えるクライエントや,既存の制度では対応が難しい課題を抱えるクライエントの増加も指摘されています。社会福祉士は関係各分野とも協働しながら地域共生社会を実現し,新たな福祉ニーズに対応する実践者としての役割を期待されているのです。
いよいよ令和6年度に実施される第37回国試から新カリキュラムに対応した新出題基準からの出題となります。試験は6科目群19科目での出題となり,また,合格基準も変更され,6科目群のすべてで得点し,19科目で6割以上の得点が求められる予定です。19科目という広範にわたる科目を扱うと同時に,より実践的かつ深い理解も必要とされる問題も出題されることを考慮すれば,合格率の数値から受ける印象以上に難易度は高いということがいえます。
出題基準の変更点としては,地域福祉にかかわる科目の内容が見直され,ソーシャルワークにかかわる科目の再構築が行われました。同時に,社会保障や社会福祉にかかわる各制度の理解を深め,保健医療・権利擁護などについても体系立った学習を行うことが求められます。本書では,こうした改訂事項にいち早く対応し,学習の便宜を図るため,最新の第36回試験問題を中心に,科目ごとに学習に必要な過去問の回数を設定,試験問題を新出題基準に基づき再配列しています。
解説にあたられた先生方は,社会福祉や医療の実践・研究・教育に熱心に取り組まれている方々であり,限られた紙面のなかで,ポイントをおさえ学習に役立つ情報をできうる限り盛り込んでいただきました。
本書は,国家試験のための過去問題集としてだけではなく,広く社会福祉士教育の参考書として意義をもつものです。
社会福祉士を目指す方には,本書をご利用いただき,合格を果たされますことをお祈りいたします。また,指導にあたられる先生方には,本書を福祉教育にお役立ていただければ幸いです。
2024年4月
福祉教育カレッジ