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第117回医師国家試験 総評

2023/02/10

国試情報

2023年2月4日(土)、5日(日)の2日間にわたり、第117回医師国家試験が実施されました。2日間で合計400問を解くというプレッシャーはもちろんのこと、COVID-19の流行も続く中で感染対策と体調管理にも気を配らなければならず、受験生の皆さまの気苦労は相当のものだったと推察します。2日間、本当にお疲れさまです。まずはこれまでの疲れを癒やしながら、ゆっくり羽を伸ばしてください。
以下に、第117回医師国家試験の総評を記します。

昨年同様に臨床的判断を問う問題もあり、「臨床実習の成果を見る」という国家試験の方針が垣間見えました。
全体としてはやや難化と言えますが、多くの受験生が解ける「正答率の高い問題」も多く出題されており、これらは過去に類題が出題されたことのあるテーマでした。しかし、当時は多くが答えの割れる問題であり、決して簡単な問題というわけではありません。
国試過去問数や映像教材の充実もあり、受験生の知識完成度のレベルが、年を重ねるごとに飛躍的に上昇しており、一昔前は答えが割れるような問題も、過去問研究の方法論が進化・確立したことにより、ほとんどの受験生が対策済みの問題になっています。

例:A29(心筋梗塞後の乳頭筋断裂),A47(調節性内斜視の対応),C40(光化学オキシダント),C63-65(亜急性甲状腺炎の対応),D17(チョコレート嚢胞の治療方針),D40(運動誘発アナフィラキシー),D44(膀胱頂部に発生する悪性腫瘍),F13(副腎腺腫によるCushing症候群),F24(統合失調症の症状評価尺度)など.

臨床的判断、臨床実習の成果を問うている問題も散見されましたが、過去問ベースの知識と考察で、ある程度選択肢を絞ることができる問題が多くみられました。しかし、7000問以上の過去問がある現状では、過去問ベースとはいえ決して簡単なことではないです。
ただ、今後の国家試験において、直近の国家試験のストーリーを少し変えた上で「新たな臨床的判断」を求める問題は十分に出題が予想され、この問題を発展させて、次に聞かれるとしたらこういう点だろうという着眼点が重要となります。

例:A37(切除断端陰性の皮膚悪性腫瘍の対応),C56(外尿道口を閉塞する腫瘤の緊急処置),C67(黄色ブドウ球菌菌血症のマネジメント),D42(ギャッジアップが可能となった脳梗塞患者のリハビリ),D48(脳梗塞に対する急性期治療),D53(DLBCLに対する治療前検査),D62(脳腫瘍摘出術後の神経障害),D70(腹膜播種をきたした卵巣癌の治療),F31(術中病理診断の組織の取り扱い)

必修は全体として例年通りの出題傾向であったかと思われます。
学生からは、初日のBブロックよりも2日目のEブロックが難しかったとの声が上がっておりましたが、昨年までを踏襲しており、判断が割れた問題として、B9(HELLP症候群)、B18(TDMの対象となる薬物)、B23(GFRと腎機能)、B29(体液過剰の指標)、E9(筋肉注射の合併症)、E19(食物摂取推奨量)、E29(終末期の疼痛管理)、E30(自然流産歴のある妊婦の対応)などがありましたが、合計8割は十分に届く試験であったと言えます。

公衆衛生は出題範囲が広範であるため、過去問の傾向を外すことで、難問(学生の予想を外す)になりやすい傾向があります。116回は新傾向の問題が多く正答率が下がったが、本年は少し戻り、過去問研究が有用な問題が多かったように感じます。
新傾向の問題の例:
C18(相対的貧困),C27(学校保健安全法),C33(精神保健福祉センター)

ガイドライン改訂により新しく出題された新規疾患もありましたが、多くの予備校や映像講義で予想として強調されていたものであり、臨床現場でのトピックス性が高い領域については、過去出題が無くても対策の必要性が高いと思われます。
例:A23(たこつぼ心筋症),A62(好酸球性食道炎)