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第37回社会福祉士国試総評

      2025/03/13

第37回は新カリキュラムにおける初めての試験でした。科目構成や問題数等、事前にわかっていた変更点もさることながら、実際の試験問題に目を通すと、出題形式において過去の試験と異なるパターンがいくつもありました。まずは全体を振り返りたいと思います。

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■出題傾向について

①全体正解率が低いことを見越した「難易度調整問題」はやや減少
例年、試験の難易度を調整するために、模試高得点層でも解けない問題が混在していることが出題傾向における特徴の一つです。前回までの試験では、国試出題実績のない問題や、ニュース等で情報収集をしていても解くのが難しい問題(例:第34回問題28/国際条約の条文に規定されていない内容はどれか)の比率は150問中30問前後(全体の約20%)でしたが、今回は同じ方法で集計したところ129問中20問(全体の約15%)が「難易度調整問題」と想定される問題でした。
したがって、過去問題や参考書の学習で対応できる問題が多かったものの、見慣れない問題形式や事例問題の増加に、難しかったという声が多くの受験生から聞こえてきました。

②出題内容の重複
合格基準点が99点に跳ね上がった第30回試験において、その要因の1つは出題内容の重複が目立つことでした(覚えている内容では、民生委員・児童委員の基礎的な知識で3点取れるなど)。
今回の試験においても、頻出の内容が出なかったパターンもたくさんある反面、ごく限られた範囲の知識が2問以上の正誤を左右する問題が複数ありました。一例を挙げます。

・問題6と問題54 「精神保健福祉法」の入院形態(精神専門の問題46でも同様の出題あり)
・問題10と問題18 「レジリエンス」
・問題39と問題55 「障害者差別解消法」

近年の傾向から、合格基準点が6割ラインから大幅に上がるということはなさそうですが、新カリキュラムで追加された内容も含め、満遍なく受験対策をしていた受験生が報われる問題構成であってほしいと思います。

③事例問題の増加
福祉教育カレッジでは過去の出題傾向から計算し、第37回国試では約35問程度の事例問題が出題されるのではと予想し、模擬試験において各社と比較しても圧倒的に多くの事例問題を出題しました。しかし、国試では模擬試験を上回る48問が出題され、全ての問題の3分の1を上回る比率でした。

単純な知識の想起で解答できるタクソノミーⅠ型の問題だけではなく、状況を理解・解釈して解答するタクソノミーⅡ型、理解している知識を応用して問題解決方針を判断し解答するタクソノミーⅢ型の問題を充実させて出題する必要がある。

令和4年1月17日「社会福祉士国家試験の在り方に関する検討会」の資料より  

国からは新カリキュラムでの事例出題について、このような方向性が示されていました。この方向性が移行期間を経て本格的に反映された点が第37回試験の大きな特徴といえそうです。事例問題の増加によって難易度が上がる内容と下がる内容がありますが、詳細は科目ごとの分析において触れていきます。
今回、「過去問題にはなかったような事例の出題形式に戸惑った」という声は、大学生から多く聞かれました。一方、社会人受験生にとっては、社会保険の加入歴や職場での実践経験から、「これまでの試験よりも解きやすく感じられた」という声が聞かれました。今後、新しい出題形式の事例問題への対策方法を、これまで以上に模索していく必要性が高くなったと感じられます。

■科目別の特徴

【共通科目】

●医学概論 (難易度★★☆)
例年、出題基準に沿った出題を特徴とする科目でしたが、傾向ががらりと変わり、頻出である高齢期の特徴、ICF、DSM-5、リハビリテーション等は出題されませんでした。「薬害有害事象」「経皮的酸素飽和度(SpO2)」といった、医学用語が出題されたことも特徴的でした。
なお、問題3の2「筋組織にはカルシウムを貯蔵する働きがある」の選択肢ですが、筋組織を構成する筋細胞の小胞体はカルシウムを貯蔵しており、このカルシウムは筋収縮調節に活用されています。したがって、正しい記述と判断できますが、一方で、5「骨には血球をつくる働きがある」も骨の中にある骨髄には血球をつくる造血機能があります(全ての骨髄ではなく、赤色骨髄をもつ骨には、造血機能があります)。したがって、どちらも正答となる可能性があります。

●心理学と心理的支援 (難易度★☆☆)
これまでの出題傾向どおりの構成でした。最後の2問は大項目5(心理アセスメント、面接技法、心理療法)から出題されることが多く、今回もそういった構成でした。大項目5についてはタクソノミーⅠ型の一般問題(5肢に5つの検査や療法が並んだもの)のほうが難易度は高くなりますので、問題11が事例になったこと、問題12は認知行動療法の特徴さえ分かれば解けることで、全体的に難易度は易しかったといえそうです。問題8の選択肢が事例形式の問題は今後も出題される可能性がありますが、まずは落ち着いて問題文を読むことが大切です。

●社会学と社会システム (難易度★★☆)
新カリキュラムで出題基準の内容変更が多い科目の1つでした。過去問等の知識で十分対応できる難易度の問題もありつつ、問題15のような過疎地域の現状について、数字データをイメージして捉えなければならない問題も見られました。受験生は正誤の判断に迷い、解答もばらける問題になったのではないでしょうか。

●社会福祉の原理と政策 (難易度★★☆)
旧科目「福祉行財政と福祉計画」が「地域福祉」に吸収されたことで、これら2科目で出ていた問題がどのように出題されるのか、予想は難しい面がありましたが、問題25「福祉の措置」や問題26「福祉事務所」などは旧科目で出ていたような問題で、本科目へも移行したという印象を受けました。また、問題24の「国民の健康」も従来であれば医学概論で出題されてもおかしくないことから、同科目特有の出題内容はそれほど多くなく、他科目と横断的に対策をすることが必要であることを再認識しました。

●社会保障 (難易度★★☆)
新カリキュラムで問題数が増え、「家族の現状と適用される社会保障制度」を答える事例問題が一層充実した印象を受けました。難易度にはばらつきがありますが、事例も手が出ないほど難しいものはなく、過去問と言い回しが多少違ういわば定番の歴史問題等もあったため、この科目の失点を心配していた受験生も、思ったよりは1、2点得点できたという印象ではないでしょうか。

●権利擁護を支える法制度 (難易度★★☆)
これまで、タクソノミーI型で出題される問題としては全く手が出せないレベルのものもあり、0点足切りを経験した人も少なくない同科目ですが、今回からは単体科目の「0点足切り」がなくなったことと、成年後見制度のみに偏らない新たな学習内容も増えたことで、解きやすくなったと感じる受験生も多かったのではないでしょうか。問題42では選択肢5の「1から4までの記述はいずれも不適切である」が正解であり、こういった出題形式は過去にほとんどなかったことから、今後は出題の可能性も視野にいれなければなりません。

●地域福祉と包括的支援体制 (難易度★★★)
誤肢の構成として「受験生に熟考を促すもの」と「出典を探すのが難易な(いわゆる)重箱の隅をつつくもの」があるのですが、熟考を促す問題が多くあったことで難易度が上がった印象です。
熟考が必要だった問題として、
問題45選択肢3「包括的な支援体制の整備に関する事項」について、いずれかの項目を(地域福祉)計画に位置付けている市町村は、8割を超えている。」
→地域福祉(支援)計画策定状況等の調査結果概要 (令和5年4月1日時点)によると、1,301 市町村(87.2%)なので○
問題48選択肢1「重層的支援体制整備事業によって包括的な支援の整備に取り組んでいる自治体は、令和5年度の時点で全体の半数を超えている。」
→令和5年度 は189 市町村なので×(重層的支援体制整備事業等の取組状況について(地域福祉課)より)
この2肢は、似たような問題にも見えるので、深く思考することでかえって戸惑われた受験生もいるかもしれません。それぞれの問題で問われたポイントを理解するためには社会福祉法上の規定や、重層的支援体制整備事業の枠組みに関する理解が必要であり、改めて復習してみて頂きたいところです。

●障害者福祉 (難易度★☆☆)
前述した出題内容の偏りはありましたが、全体として基礎的な学習内容で解ける問題でしたが、問題52の、調査や白書を3つ併用した問題は、障害をもつ方の生活実態について俯瞰して正答を導くのが難しい問題でした。

●刑事司法と福祉 (難易度★★☆)
医学概論と同様に、社会福祉士試験の受験生の基本的な学習では解けないレベルの問題もありましたが、旧科目の「更生保護制度」や「医療観察法」を学習していれば決して難しくない出題もありました。新科目で手も足も出ないということはなく、3~4点は取れる構成であったと思われます。

●ソーシャルワークの基盤と専門職 (難易度★★☆)
ほぼ例年通りの出題構成でしたが、問題69「ドルゴフの倫理原則」は、養成テキスト上では「倫理的ジレンマが生じた際の優先順位の付け方」について学ぶ内容となっており、1つ1つの原則の詳細については細かく解説されていないため、正答を選ぶこと自体が難しかったのでないでしょうか。

●ソーシャルワークの理論と方法 (難易度★☆☆)
福祉教育カレッジでも予想したとおり事例問題が増加しましたが、答えを導くのがやや難しい問題も見られました。例えば問題72について本来は「課題中心アプローチ」であることを判断するためには、

・クライエントが自ら解決できると信じている現実的な課題に取り組む
・短期的な計画に基づく支援である
・課題解決のための具体的な行動を検討する

といった要素があります。事例にこれらの要素が盛り込まれていると判断し、「課題中心アプローチ」を導き出すのはやや難しかったと思われます。

●社会福祉調査の基礎 (難易度★★☆)
新カリキュラムへの移行にあたって追加された学習内容の出題は少なく、従来通りの学習内容をタクソノミーⅡ型に発展させた出題が特徴的でした。心理学と同様、事例問題になったほうが難易度は下がりますので、問題81や問題82については、用語がうろ覚えであっても選択肢を1つずつ検討することで解けるチャンスのある問題でした。

【専門科目】

●高齢者福祉 (難易度★★☆)
旧カリキュラムの10問から6問と、問題数が大きく減りました。出題の構成は旧出題基準にあった介護技術などがなくなった以外は概ね例年通りで、過去問題や対策講座として頻出の内容をしっかり学習していれば解ける問題が多かったようです。歴史問題について、問題86で出題された介護保険法は、制定年(1997年)で出題されましたが、問題29では施行年(2000年)で出題されていました。大きな法律では制定から施行までに期間が空くことがありますが、これらについては「成立」「公布」「施行」といった知識も同時に学び、どちらで出ても落ち着いて問題に取り組めるようにしておく必要があります。

●児童・家庭福祉 (難易度★★☆)
この分野で近年法改正が多かった背景からの予想どおり、児童福祉法に多数追加された新しい事業、そして「困難女性支援法」に関連する問題が2問出題されました。児童・家庭福祉の領域は、関係機関(連携先)が多く、事例問題として出題されると難易度が上がります。問題92や93がそれですが、難易度★★★に近い★★☆といったところでしょうか。名称が似通ったものも多く、混乱しやすいですので、例えば「児童相談所」「こども家庭センター」「児童家庭支援センター」といった福祉行政の役割の違い等、しっかりと学習して臨むことが大切です。

●貧困に対する支援 (難易度★☆☆)
全体的に難易度は低かったといえそうです。旧カリキュラムでは生活保護法の出題割合が高かったですが、今回は生活困窮者自立支援法と生活福祉資金の割合が増えました。これらの制度については、事例問題も含め、これまで以上に対策をしておく必要があります。

●保健医療と福祉 (難易度★☆☆)
「治療と仕事の両立(ガイドライン)」については社会学の新カリキュラムの学習内容として位置付けられていましたが、同科目で出題されました。頻出である医療施設や医療計画について出題されず、事例問題の比率も増えたことで、全体的な難易度は低かったといえそうです。

●ソーシャルワークの基盤と専門職 (難易度★★☆)
社会福祉士の専門性について人名と理論を一致させるような問題が共通科目に続いて出題されました。最低限、テキストに掲載されている内容や過去に出題実績のある人名等は押さえておく必要がありますが、テキストに掲載されていないような人物や内容まで完璧に対策することは難しく、「これは難易度調整問題」と割り切って別の単元の学習に注力するという判断もあると思います。また、認定社会福祉士に関する単独問題が出題されていたことも特徴的でした。

●ソーシャルワークの理論と方法 (難易度★☆☆)
共通科目に続き、事例問題の多いことが特徴的な構成でした。その影響として、消去法で回答を絞っても「本当にこれで合っているのか」と不安になるような問題(選択肢)がいくつか見受けられました。
例えば問題119は事例検討会の実施を自ら希望しているC相談員への配慮を選ぶ問題で、1から4を明らかな間違いと消去して、5の「他の参加者からのコメントに防衛的にならないようにする」が残った、という解き方をされた方が多かったと思います。「防衛的にならないようにする」ことがどのような配慮を意味するのか、疑問が残った方もいたのではないでしょうか。正答と解説がついた「過去問」になった時点で、違和感はなくなるとは思いますが、試験会場で初見でも対応できるように、多くの事例問題にチャレンジし、その解き方を学ぶ必要性を強く感じました。

●福祉サービスの組織と経営 (難易度★★☆)
タクソノミーⅠ型の問題が減ったことでやや難化した印象です。しかし出題構成は旧カリキュラムの流れを汲んでいますので、まったく見たことのない情報が出てくることはほぼありません。問題124のような事例の条件から多くの知識を問う問題は今後も出題される可能性が高いため、要点を押さえて読む力もあわせて、訓練が必要かもしれません。今後も、過去問題の正確な理解や頻出の理論、用語の学習をしっかりやっておくことが必要です。

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