第100回薬剤師国家試験は,平成27年2月28日,3月1日に実施された。受験者数は14,316名,合格者は9,044名,合格率は63.17%であった。前回(第99回)より出題問題の難易度が高まり,今回もそれを踏襲すると思われたが,その予想は当たったといってよい。ただ,前例がない全員正解の補正問題が11問出現し(必須:5問,理論:4問,実践:2問),これにより合格者数は前回より1,700名以上増えている。この補正問題で救われた学生も多かったであろうが,一方で薬剤師国家試験の性質も今後問われてくると思われる。
今回はグラフを扱った問題が多出している。新傾向といってよいものばかりだが,落ち着いて解けば決して難しくはない。生薬では写真を扱った問題が初めて出題された。構造式を掲げた問題は化学に限らず,生物,衛生等の他科目でも目立ってきている。法規は薬事法が医薬品医療機器等法に改正されての初めての国試となった。新登場の医薬品もGLP-1作動薬,HIV,抗悪性腫瘍薬といったところで抜かりなく出題されている。このように,薬剤師を取り巻く環境の進展から新しい事項が取り上げられるようになり,国試では毎回薬学生に薬剤師への厳しい関門を突き付けているといってよい。
ただ,本書「傾向分析と対策」執筆の各先生が述べられているように,国試攻略の第一は「過去問」を完全に攻略しておくことにある。「暗記」ではなく,「理解」することが求められ,それにより応用力が身に付く。有効に活用してほしい。加えて,授業や実習で6年間学んだことを総復習することも必要であろう。実務実習で学ぶ中には新しい医療・薬学情報も含まれており,それが国試に直接繋がることも知っておくべきである。
数ある国試解説書のなかで,本書ほど丁寧に解説したものはないであろう。単なる解説ではなく,問題の周辺知識も得られるように詳しく説明されているが,それは学生のためにより解りやすく伝えようと心がけておられる熱血・辣腕執筆陣の賜物である。ぜひ多くの学生たちに本書を活用してもらいたい。そして多くの意見・感想を寄せてもらいたい。そのことで「わかる本」がより発展していけるであろうし,それは後々,諸氏の後輩のためにも役立っていくであろう。
本書および『国試がわかる本』で10年分以上の過去問を踏破し,自信をもって国試に臨み,合格を勝ち得ることを心から願ってやまない。
「第100回薬剤師国家試験問題解説書」編集委員会