現在,臨床実習開始前の歯科医学生の知識・技能・態度を評価する全国共用試験が導入されており,その目的は良質の歯科医師を養成することである。
歯科医学生が患者に接し,診療参加型の臨床実習を行うためには,実習開始前に基本的歯科医学知識・技能・患者との基本的コミュニケーションを知っておくことが必要との認識に基づいている。また,臨床実習に参加し患者に接する歯科医学生が一定の能力を有することを社会に保証することにもなる。
共用試験は共通基準を設けた組織的評価を行うために,歯学教育モデル・コア・カリキュラムに基づき,全国各大学が参加して試験問題を作成する。知識の評価にはCBT〈Computer Based Test〉を,診察技能・態度の評価にはOSCE〈Objective StructuredClinical Examination〉を用いる。
CBT は知識・思考力(問題解決能力)を問う試験で,コンピュータを活用し,プール問題から無作為に設問を選択する試験である。問題は五肢択一方式の一般基本問題,画像を使用した臨床問題,五肢択一または多肢択一方式をとる2連問や4連問から構成され,受験者は試験問題が用意されたコンピュータで解答する。320設問中約240設問が採点対象問題であり,これまでの試験によって問題の特性の判明しているプール問題から出題されている。残りの約80設問は新規に作成された問題であり,全大学の試験終了後,問題の難易度と識別力などの特性を評価し,良質かつ適正な問題のみ次回以降に出題するためのプール問題として蓄積される。受験生ごとに出題される問題のセットは異なるが,難易度の差ができるだけ小さくなるように調整されている。
歯科医師国家試験を受験するためには歯科医学全般にわたる総合的知識が必要ではあるが,患者の治療に必要な知識はほとんどが最低限身につけておくべき知識と技能である。共用試験ではその最低限の知識と技能レベルを要求される。
本書においては共用試験のガイドラインにならい問題と解説を掲載してある。問題の解答や解説で気になった箇所やわかりにくかった点を確認し,必要事項を直接書き込むことにより自分なりのバイブルを作成して欲しい。そして今後の臨床実習に活用して欲しいと願っている。
2021年7月
CBT ANSWER編集委員会