本書は,これから解剖学を学ぶ人のための本です.というと「講義の前に読む入門書?」と思われるかも知れません.もちろん,講義の前に読んでいただいても「身体や脳に良くない副作用」などはありませんから,どんどん読んでいただきたいと思います.
でも,今はじめて本書を手にした方,あるいは持っていたけれど今日まで開いたことがなかった方のほとんどは「もうすぐ解剖学の試験」という方ではないでしょうか(もちろん,試験前の貴重な時間に「はじめに」を読む人は少ないでしょうが…).
実は,本書は「試験前なのにどこから勉強したらよいか分からない」という方を想定した本です.ですから,どこからやっても何とかなるように「読み切り形式」で書かれています.一応,章で区切られていますが,すべて1頁あるいは2頁でまとめられていますから,読みたくない頁は「とばし読み」もできます(とばした結果は保証しませんが…).
小・中学校と違い,大学では「授業でやったことだけが試験に出る」という訳ではありません.どんな教科書にも書かれている(と信じられている)常識的な事柄は普通に試験に出題されます.ですから,教科書を暗記するだけでは不十分です.でも,ある程度の知識がないと考えることもできません.本書は,ある程度の知識(最低限の知識)をものにするための本と考えて使ってください.そのために「憶え方」や「メモ」も随所に入れてあります.
本書の使い方は自由ですが,1つの方法を示しておきます.授業で使う場合も,過去の試験問題を使って勉強する場合も同様ですから,試してみてください(実は,他の科目でも使えるのです…).
まず,本書の索引をコピーします.次に,授業や試験問題などで出てきた「単語」を索引で調べ,コピーのその単語にチェックを入れます.これをある程度繰り返すと「チェックの多い単語」が見えてきます.もう分かりますね.そうです! 「チェックの多い単語」は「試験に出る項目」,言い換えれば「重要な項目」と関係が深い単語なのです.勘の良い皆さんなら「重要な項目」から勉強するのは当然! ですね.
最後になりましたが,本書は医学評論社の多くの皆さん,特に編集部のK氏のお力のもとで作成されました.あらためて厚く御礼を申し上げたいと思います(もちろん,この本を購入して下さった皆さんの次にですが…).
平成27年弥生
杏林大学医学部解剖学教室 教授
松村讓兒