近年,バイオセーフティすなわちバイオハザード対策は,新しい病原微生物の出現による国際的感染症の登場や,先端医科学,遺伝子工学,医薬品の開発などに係る研究・開発において強く求められている.また,この対策は,最近とみに注目されているバイオテロリズムの防止に係るもので,感染症法を基に国家的政策にも取り入れられており,その重要性は言うまでもない.対策を講ずる場合は,過度に厳しい規則を制定して研究を阻害したり,物理的安全設備に過度に依存して,安全性の本質を忘れることのないようにしなければならない.バイオセーフティで最も大切なことは,正しい微生物学的操作法を実験従事者のみならず補助者に対しても十分に啓発することである.
上述の情況を踏まえ,バイオメディカルサイエンス研究会では,長年にわたり毎年継続して開催してきた,バイオセーフティ技術講習会の教材を基本に,講義に携わった専門家講師を中心に実務書を作成することとなった.
本書は大要として,次の4つから構成されており,その内容は実験施設の管理者,実験室安全管理者,実験従事者などを対象として編纂されている.
1.微生物の基礎
2.バイオセーフティの概要
3.実験室におけるバイオセーフティ
4.バイオセーフティの関係分野
本書がバイオハザード対策に直面している実験施設従事者にとって標準的教材として活用され,この分野に関係を有する方々に良き参考書となることを願う次第である.
なお,本書は,当研究会の既刊の「バイオセーフティの事典」(みみずく舎刊)と併せ活用されることをお薦めしたい.
おわりに,本書の編集に協力していただいた,バイオメディカルサイエンス研究会の白井正孝氏と三好哲夫氏に謝意を表する.
2011年5月
編集委員長 小松 俊彦